
神戸大学大学院工学研究科教授
森井昌克(もりい まさかつ) 1958年大阪生。
インターネットの文化的社会的側面、それを基盤としたIT社会、およびビジネス、ベンチャー起業について研究、活動にも従事。「新しい暗号技術とその情報セキュリティへの応用」、「Web改竄の実態とセキュリティ監査サービス」、「インターネットプロトコルハンドブック」等、著書論文多数。1994年電気通信普及財団賞、2002年コンピュータセキュリティシンポジウム論文賞、2003年暗号と情報セキュリティシンポジウム20周年記念論文賞受賞。2004年オフィスインフォメーションシステム研究賞受賞。
ホームページ: http://srv.prof-morii.net/~morii/
ファイル共有ソフトを経由して感染するウイルスがまん延しています。パソコン内の画像や文書を広く公開してしまう「暴露ウイルス」。その作者が逮捕されニュースでも大きく取り上げられた通称「イカタコウイルス」という、ハードディスク上のファイルを削除し、アイコンをイカやタコのイラストに変換してしまうウイルスなどが有名です。ファイル共有ソフトの出現と共にまん延したウイルスが、いまだに猛威をふるう理由は、着メロや着うたなどの音楽やCD、DVDのソフトを不正に入手しようという好奇心を利用して容易に感染が広まる仕組みとなっています。
ファイル共有ソフトが違法であるわけではないのですが、ファイル共有ソフトの最大の問題点は不正なファイルを簡単に流通(共有)させているところにあります。実際には共有されているファイルのほとんどが不正なファイル、つまり著作権を侵害するファイルとなっているのです。
著作権を侵害する行為はインターネットの普及時からありました。自分のホームページやブログでアニメのキャラクターやアイドルの写真を無断で掲載するなどの事例がそうです。また高速なインターネットの普及(ブロードバンド化)にともない、CD販売している音楽をMP3と呼ばれる音楽ファイルに変換し、不正に流通される事例が多くあります。このような著作権者に無断でブログ等に掲載する、あるいは音楽ファイルを流通させる、すなわちダウンロードできるようにすることは違法であり、取り締まりの対象となっていたのです。
※改正前の著作権法では、著作権を侵害する音楽・映像をアップロード(公開、配信)する行為は違法として禁止されていました。
著作権を侵害するファイル、すなわち通常、有償で取引されるデータをコピーして第三者に供与することは、店頭にある品物の代金を払うことなく、持ち去ることと同じです。不正なファイルを取り出す、つまりダウンロードする人は、そのファイルについて誰も対価を要求しないことから、悪意を持つことなく、その行為に及んでしまいます。しかしファイル共有ソフトなどでダウンロードしたファイルは盗品と同じであり、犯罪者の片棒を担ぐことと同等です。何よりも著作権者の創作に対する代償が払われず、創作活動自体を侵すことになりかねません。そうなれば優れた創作物、すなわち音楽や映画を作ることができなくなるかもしれません。
著作権者に無断で音楽や映像を含むすべての著作物をコピーすること自体、大きな問題です。しかし著作権に関する法律がインターネットやパソコンという、誰もが簡単に著作物をコピーできるだけでなく、瞬時に不特定多数の人に対して配布できる、言わば魔法の道具を想定していなかったことで、私的なコピーは例外として違法とされませんでした。このことから不正なファイルであったとしても、そのファイルを他の人に配布することは違法であっても、ファイルを受け取る、つまりダウンロードすること自体の違法性は問えなかったのです。
しかし、2010年1月から施行された新しい著作権法では、不正なファイルと知りつつダウンロードする行為自体が違法となりました。ファイル共有ソフトを使えば簡単にダウンロードできますが、著作権法と言う非常に重い法律で厳しい裁きが待っているのです。身近になった著作権法を理解する必要があります。
※権利者に無断で音楽や映画をファイル共有ソフト上にアップロード、ダウンロードする行為は著作権法違反となります。
※2010年1月末から2月初めにかけて、ネットに関連した著作権法違反容疑で逮捕が4件、うち、2件はファイル共有ソフトを使ったアニメや映画の公開で、「公衆送信権」侵害容疑での逮捕である。
※改正著作権法について